2021.04.17
世界に類のない日本の戸籍制度。明治から現在までの戸籍様式の変遷は?
「家系図」を作成するためには、まず戸籍をさかのぼってすべて取り寄せます。
そうすると、戸籍には時代によって様式や記載内容が異なることに気づかれるはずです。
法律の改正や、記載内容、記載方法の変更などによって、戸籍は何度か作り変えられているのです。
戸籍は日本人のアイデンティティ
『戸籍』は、結婚や離婚、養子縁組、相続手続きをするときなどしか目にする機会がないのが普通です。しかし、『戸籍』は日本国籍をもつ日本人が「日本人であること」を証明する唯一の公的書類で、日本人としてのアイデンティティの基礎と言っても過言ではないほど大切に思われている書類です。映画やドラマなどでも「戸籍が汚れる」などという言い方を耳にされたこともあるのではないでしょうか。「バツイチ」という言葉も、離婚すると配偶者欄に「バツ」が書かれることから来ている言葉です。
現在の戸籍は、夫婦とその間の未婚の子を単位にして作られていて、氏名、生年月日、父母との続柄、出生、婚姻、離婚、養子縁組、死亡などの記載がされます。戸籍には、きわめてパーソナルな個人情報が記載されていますので、取得する際には厳格なルールに従って申請する必要があります。
戸籍の様式の変遷
すべての日本人を一律に対象とした近代の戸籍制度は、明治4年(1871年)の「戸籍法」からスタートしました。それまでも、戸籍は各府県ごとに独自の様式で作成されていたのですが、これを全国的に統一された書式で書き換えることとなり、明治5年から戸籍の作成が開始されました。このときに作られた戸籍が、現在まで続く近代の戸籍のベースとなっているものです。それから150年間にわたって独自の発展を遂げた日本の戸籍制度は、きわめて精緻な日本の家族制度の基礎資料と言えるでしょう。戸籍があるおかげで、わたしたちは先祖を知ることができ、家系図を作成することができるのです。
150年間の間には、戸籍が「家単位」から「夫婦単位」となったり、コンピューターで編集されるようになったりと、様式が5回変わっています。
明治4年式戸籍(壬申戸籍)
現在まで継続する日本最初の近代的な戸籍は、明治4年戸籍法にもとづく『壬申戸籍』です。戸籍法の施行が、壬申(みずのえさる)の年だったことで「壬申戸籍」と呼ばれています。壬申戸籍には、身分、職業、死因などきわめて繊細な情報の記載があり、これが差別につながるということで、昭和43年に閲覧が禁止されました。自分の先祖の壬申戸籍を見ることも一切出来ませんので、したがってサンプルもなく、家系図の作成に使用できません。
壬申戸籍の編成は、「屋敷」、「家屋」を単位にして編成されていました。本籍は、住所地と定められていて、住民票の役割も果たしていました。
『ヤフオク出品後、法務局が回収!絶対閲覧不可の封印された『壬申戸籍』とは?』
明治19年式戸籍
現在取得できる最も古い戸籍が『明治19年式』戸籍です。家系図を作成する際に『明治19年式』戸籍まで遡って取得できるのが理想的ですが、戸籍の保存年限(50年、80年、現在は150年)の関係で、すでに廃棄処分になっているものもあります。
『明治19年式』戸籍は、『家』を単位として編成されていて、戸主と、戸主の直系・傍系の親族を一つの『家』として記載されています。つまり、『明治19年式』戸籍には、孫やひ孫、兄弟の妻や甥姪、その子など、非常に広い親族の記載があります。出生、死亡、婚姻、離婚、養子縁組といった事項の記載があり、失踪者の帰還、家督相続の変更、族称の改称等が記載されている場合もあります。
『明治19年式』戸籍まで遡ることができれば、幕末に生きていた先祖ということになるわけです。そして、その先祖の両親の記載もありますので、これによって江戸末期の先祖までが判明するということになるわけです。
明治31年式戸籍
明治31年の戸籍法では、戸籍とは別に「身分登録簿」が設けられました。戸籍の目的を「身分の公証」であると定義したうえで、『明治19年式』戸籍と比較すると、父母の氏名や続柄が確実に記載されるようになりました。また、出生、死亡、婚姻、離婚、養子縁組などの身分に関する届出がされると、いったん「身分登録簿」に登録され、重要な事項のみが戸籍に転記されるという仕組みしたが、手続きが煩雑であったため、『大正4年式』戸籍からは「身分登録簿」は廃止されました。
明治31年式戸籍の特徴は、「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」という欄が追加されたことです。いつ、どんな理由で戸主になったのかが記載されています。
大正4年式戸籍
『大正4年式』戸籍では、明治31年式戸籍で戸籍と併用されていた「身分登録簿」が廃止されました。記載された者全員に、両親、生年月日、戸主との続柄が記載されるようになりました。また、大正4年の戸籍法改正によって、戸籍の管理が「戸籍吏」や「戸籍役場」ではなく市町村役場が取り扱うことになりました。
戸主に関する情報が、より詳細に記載されるようになり、明治31年式戸籍にあった「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」の欄が廃止されて、戸主の事項欄に記載されるようになりました。
昭和23年式戸籍
太平洋戦争の敗戦後、日本国憲法が制定されて日本の家族のあり方は大きく変わりました。日本国憲法の制定に伴って、昭和22年には民法が改正されて「家制度」が廃止されました。これにより、戸籍の編成単位が「家」から「夫婦のその子」に変わりました。戸籍のあり方がもっとも大きく変わったのがここです。これまでのように、祖父母や兄弟姉妹、叔父叔母、甥姪、孫などが同じ戸籍に入ることはなくなりました。また、「戸主」は廃止され、新たに「筆頭者」という考え方が導入されました。「筆頭者」とは、その戸籍の一番最初に書かれている人のことで、戸主と違って何の権限もありません。筆頭者が死亡した場合にも、戸籍を新しく編成することはなく、亡くなった者が戸籍の筆頭者のままとなります。
平成6年式戸籍
現在の最新の戸籍様式が平成6年式戸籍です。
平成6年の戸籍法改正によって、戸籍を「和紙」ではなく「コンピューター」で管理することになりました。これに伴って、「戸籍謄本」が「全部事項証明書」となり、「戸籍抄本」が「個人事項証明書」となりました。