2021.04.21
旧民法での『家族相続』と『遺産相続』の違い。いまとは全然違うんですよ!
戦前までの民法では、個別の財産ではなく『家』を引き継いでいくことが相続の中心的な考え方でした。
そこでは、『家督相続』という、現在とはまったく違う仕組みが採用されていたのです。
旧民法の相続
【戸主:家督相続】
【戸主以外:遺産相続】
明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの間に、相続が開始した場合は、旧民法が適用されます。
旧民法では、戸主に相続が開始した場合には『家督相続』となり、家督相続人1人が全ての財産を相続しました。
これに対して、戸主以外の家族の相続は『遺産相続』となります。
家督相続とは?
『家督相続』とは、戸主としての地位を、家督相続人(次に戸主になる者)が1人で単独で引き継ぐ仕組みです。
戸主としての身分が包括的に引き継がれるので、相続人は1人に限られます。
家督相続が開始するのは、現在の民法のような戸主の「死亡」だけではなく、次のような場合に開始するのが大きな特徴です。
①戸主が死亡したとき
②戸主が隠居したとき
③戸主が婚姻して戸籍を離れるとき
④女戸主が入夫婚姻をして夫に戸主を譲るとき
⑤入夫婚姻により戸主となった夫が離婚して戸籍を離れるとき
⑥戸主が日本国籍を失ったとき
家督相続人になれる順位
家督相続人になる順次夜は下記のとおりです。
家督相続人は、日本人でなければならないということになっています。
また、第一順位の直系尊属は家督相続を放棄することは認められなかったそうです。
第1:直系卑属のうち、親等の近い者が優先、男が優先、嫡出子が優先、年長者が優先、という順序で決定
第2:戸主が生前に指定した者(遺言でも指定できる)
第3:父母又は親族会によって、家族の中から選んだ者
第4:直系尊属のうち、最も親等の近い者
第5:親族会によって、親族、家族、分家戸主、本家・分家の家族、他人の中から選定された者
遺産相続とは?
旧民法による『遺産相続』とは、戸主以外の家族の「死亡」によって開始する相続の仕組みです。
家族相続とは異なり、「死亡」でしか開始しません。
第1順位:直系卑属
第2順位:配偶者
第3順位:直系尊属
第4順位:戸主
現在の民法とは異なり、配偶者が常に相続人になるわけではないことに注意が必要です。
また、第4順位として戸主が相続人になりますので、相続人不存在で遺産が国庫に帰属することはなかったのかもしれません。
【近藤】