2023.06.21
「おしゃれ」ってどんな感じ 令和に生きるその語感
「おしゃれ」ってどんな感じ 令和に生きるその語感
筆者の長男長女(ともに成人)が先日、
あるアニメーション映画の結末について語り合っていました。
その作品は長女が生まれた翌年に制作されたものであり、
今年も新作が公開されているという人気シリーズの第一作でした。
彼女は「終わりかたがおしゃれですごくよかった」といい、
長男も「そうだったね」と同意していたのです。
そのラストシーンについての説明を
二人に求めたところ、
たしかにウィットの利いた
大人っぽいオチのように感じました。
さらに配信サービスで本編を実際に見て、
なるほどこれを彼らはおしゃれといっていたのか、
と納得ができたのですが、
昭和に生まれ育った筆者の「おしゃれ」感と
微妙なずれも感じて興味深く思いました。
そこで、今回のブログでは「おしゃれ」
という言葉にスポットライトを当ててみることにします。
読者のみなさんの「おしゃれ」感の
ブラッシュアップにつながれば幸いです。
辞書によれば
言葉について語るときの王道はまず辞書を引くことでしょうか。
手元の『岩波国語辞典 第七版 新版』はこういっています。
おしゃれ【お〈洒落〉】
①〔名ナノ〕気のきいた服装・化粧やポーズに心掛けること。
そうする人。「─な男」
②〔ダナ〕(心をくすぐるばかり)しゃれた。
「─なドレス」「町並みが─です」
▷②の、物にまで広げた用法は一九八〇年代から。
なんと「おしゃれ」は1980年代以前には
もっぱら人に遣われる言葉だったと
岩波国語辞典はいっていました。
そういえば1979年に発売された
「くるくるドライヤー」の商品名が
「おしゃれさん」だったことを思い出します。
あのドライヤーは「おしゃれ」なドライヤーではなく、
「おしゃれさん」つまり「おしゃれ」な人が使う
ドライヤーだったわけです。
しかし、それが商品名になっていたということは
②の「物にまで広げた用法」は
すでに始まっていたのかも知れません。
CMソングは大瀧詠一でした。
そして②に「(心をくすぐるばかり)しゃれた」とあるので、
「しゃれる」も引かなくてはなならなくなりました。
しゃ-れる【〈洒落〉る】〔下一自〕
①気がきいている。あかぬけしている。「─れた家」。
転じて物事に通じているような風(ふう)をする。
なまいきな様子が見える。「─れたことをぬかすな」
②しゃれを言う。③身なりを飾る。めかす。
①の「転じて」のあとがなかなかにシニカルですね。
「しゃれる」について知りたいと思ってまじめに引いたら
「しゃれたことをぬかすな」なんていわれて、筆者少々へこみました。
語源は「たわむれる」から
辞書による「おしゃれ」の解釈の参照が済んだところで、
語源について調べてみましょう。
そもそも「洒落」という言葉はどこからきたのでしょうか。
「洒落」とは語呂合わせなどで
人を笑わせる気の利いた言葉。
戯れにすることや冗談ごと、を指します。
ここにも「気の利いた」が出てきますね。
英語でいうと「wit」でしょうか。
「洒落」は「たわむれ」を意味する「戯れ(され)」が
転じた言葉という説が有力のようです。
「され」には「晒れ」もあり、
こちらは物が長い間風雨や日光に当たり、白っぽくなること。
「洒落」は
「晒れ」より「戯れ」からきていると見られています。
実直さに対して、
風流で遊び心のある態度や行動を「たわむれ」の「戯れ」から転じて
「しゃれ」というようになり、
垢抜けて洗練されたさまを表すようになったようです。
ちなみに「され」が「しゃれ」になったのは
室町時代以降のことだそうです。
漢字で「洒落」と書くのは、
心がさっぱりして物事にこだわらないさまを意味する漢語
「洒落(しゃらく)」に由来しています。
意味も音も似ているため、
江戸時代から当て字として用いられるようになりました。
「洒落」の「しゃ」は「酒」ではなく
つくりが一画少ない「西」の「洒」なので、
書くときにはご注意ください。
「洒脱」の「しゃ」も同様に「洒」ですから、
いっしょに覚えておきましょうね。
要注意「オサレ」は「おしゃれ」じゃない?
ちょっと前からよく見る気がする「オサレ」。
新しいいいかただからと
「おしゃれ」の代わりに遣うのは危険です。
「オサレ」はインターネットの掲示板から広がった言葉で、
「自分ではセンスがいいと思っているけれども、
周囲から見れば微妙にずれている」
という意味なのです。
「あの人おしゃれね」というつもりで
「あの人オサレね」といったら、
からかっていることになってしまいます。
気をつけましょう、とくに昭和生まれのみなさん。
「気がきいている」の意味で遣うと応用範囲が広がりそう
筆者の「おしゃれ」が
長男長女の「おしゃれ」とちょっとずれていると感じたのは、
筆者が「おしゃれ」を服や装飾品という
「物」に対してよく遣ってきたのに対し、
こどもたちはアニメーション映画の演出という
流れのある「もの」について
「おしゃれ」の一語をはめたというところに
あったのかも知れません。
いずれにしても「おしゃれ」を
「気がきいている」という意味で遣うなら、
その対象が古くても新しくても、
手に取れる物でも抽象的なものでも遣えそうです。
会話を彩る言葉の一つとして
これからも大切にしていきたいと思いました。