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2023.11.19
「1メートル」の基準はどのように作られたのか メートル原器の歴史といま

「1メートル」の基準はどのように作られたのか メートル原器の歴史といま

 

 

冬は趣味の編み物に打ち込む筆者ですが、

編んでいる最中に気になるのは寸法です。

 

編み方の説明には「ゲージ」といって、

この編み地で10センチ角を取るとしたら

横何目の縦何段になるかが提示されています。

 

そのゲージにできるだけ忠実に編まないと、

できた帽子が小さすぎて頭が入らないとか、

セーターが大きすぎて肩から落ちる、

などということが起きてしまいます。

 

編みながら、

何度もメジャーで測ったり定規を当てたりしなくてはなりません。

 

しかしこのメジャーや

定規のセンチとかメートルとかいうものは、

どこに基準があるのでしょうか。

 

編み物本の先生が測った10センチと

筆者が測る10センチが違ったら

ゲージは成り立ちません。

 

そう考えたとき、

小学校の教科書だったかで見た

メートル原器」という銀色のレールのようなものが

思い出されてきました。

 

とても神聖なもののように見えたのを覚えています。

 

 

 

体の部分の長さからパイプの煙まで 昔の単位の基準あれこれ

 

長さの単位の基準として古くから用いられてきたのは、

人体のある部分の長さでした。

 

日本の「尺」「寸」ももとを辿れば

「尺」は指を広げたときの親指の先から中指の先までの長さであり、

「寸」は親指の幅に由来するといわれているそうです。

 

インチ、ヤード、フットなども同様で

このような長さの単位は枚挙にいとまがありません。

 

人体以外では大麦の粒の大きさや

トナカイの角の枝が見分けられる距離を

基準にした単位もあるとか。

 

なかには、タバコを詰めたパイプに

火をつけてから煙が出るまでの間に

舟が進む距離で定めた「パイプ」という、

なんとものどかな単位もあったそうです。

 

生活の範囲が限られていた時代なら、

地域で勝手に決めた単位でも

大きな支障はありませんでしたが、

地域同士の交流が生まれると、

単位がばらばらであることにより

不都合が出てきました。

国同士の貿易が盛んになり、

科学や工業が目覚ましい発展を見せた18世紀には、

単位が統一されていないことの弊害が

あちこちで起こるようになったのです。

 

また、兵器などの器械の製造や精密測量の分野では

単位の精度が求められるようになりました。

 

こうした状況において、

いくつかの国は単位の統一に真剣に取り組みはじめました。

 

 

 

フランス革命の時代に端を発していた単位の統一

 

単位の統一にとくに熱心だったのはフランスでした。

 

1790年、タレーランによる国際間の単位統一の提案が

フランス国民議会で承認されると、

政府は新しい単位系を作り上げる任務を

パリ科学学士院に委ねました。

 

ラボアジェ、ラグランジュ、ボルダといった

当時一流の学者が長さの単位の検討を始め、

結果として

「赤道と北極間の子午線の長さの1,000万分の1」

を単位とするという案に落ち着いたのです。

 

この単位にはラテン語で

「寸法」を意味する“metrum”

ちなみ“métre”という呼び名が与えられました。

 

子午線の測量は一大事業でしたが、

イギリスやアメリカの協力は得られず、

フランスはやむなく単独で測量に着手しました。

 

1792 年、フランスは革命の途上にあり、

政情が不安定でした。

 

測量は困難を極めましたが、

測量隊の出発から6年を経た1798年

ついに赤道から北極までの子午線の長さは

5,130,740トワーズとなり、

1メートルは3ピエ11.296リーニュと算出されました。

 

さっそくこの長さを表示する

板状のメートル原器が白金で作られ、

フランスの共和国文書保管所に保管されて

「アルシーブの原器」と呼ばれました。

 

 

 

メートル原器自体が基準に変わった時代

 

十進法のメートル法は合理的な単位系でしたが、

国際的な普及には時間が掛かりました。

 

しかし、1851年のロンドン万国博覧会から

1867年のパリ万国博覧会にかけて

フランスが行った宣伝により機運が上がり、

国際会議が招集され、

1870年には国際メートルの基準を

「アルシーブの原器」の現状の長さに定める

という決定がなされました。

 

人工の原器が国際メートルの標準器となったことで、

新しいメートル原器には当時の最高の技術が結集されました。

 

白金90%イリジウム10%の合金を使い断面はX型、

支える棒の一まで決められ、厳重に保管されました。

 

 

 

光の波長の長さが基準になり、さらには光の速度が基準に

 

こうして作られた1メートル原器ですが、

人工物である限り素材の変化からは免れません。

 

形のないものが新たな標準器として脚光を浴びました。

 

それはまさにです。

1960年、クリプトン86という元素が

真空中で放つ橙色の波長の長さをもとにして

新しく1メートルが定義されました。

 

さらに1983年、

レーザー技術の発展を踏まえて、

光の速さと時間をもとに1メートルが決められました。

 

「1秒の299,792,458分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」

という文科系には難しすぎる基準です。

 

これはもしかして

昔の「パイプ」の単位と同じ決めかたなのではないか、

とクラクラする頭で考えたりしました。

 

ともあれ、このような歴史のもとに、

わたしたちは1メートルを世界共通の長さの単位として

信頼して使うことができています。

 

このあと引き出しから巻尺を出して、

1メートルを目で確かめたくなりました。

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