2021.07.16
世界各国の家系図(ファミリーツリー)と戸籍について
家系図や、戸籍のような国民の登録制度は当然ですが世界中に存在します。
でも、国ごとにずいぶんと異なる制度になっているんです。
英語で「家系図」は「家族の木(ファミリーツリー)」
英語では「家系図」を「Family Tree」といいます。
ファミリーツリー、「家族の木」。
たしかに。
自分を根本に置き、父母、父方の祖父母、母方の祖父母、と先祖を遡っていく形は、幹から枝を伸ばしていく樹のようです。
最近では日本でも、結婚式のウエルカムボードにファミリーツリーを描き、両家の両親や祖父母の写真を飾るものが流行っているのだとか。
両親への贈り物にするために作る人もいるそうです。
欧米で用いられる複合姓には母方の名字が残る
英語圏に限らず、外国のファミリーツリーと日本の家系図とはどのようなところが違うのでしょうか。
結婚に際しておおかたの女性が夫の姓に変える日本では、自分の姓から父系を遡ることが比較的に容易です。
逆にいうと。母系を辿ることは難しい。
おかあさんの旧姓は知っていても、おばあさんの旧姓となると、日常生活ではほぼ知る機会はありません。
アメリカなどでは、結婚するときに、複合姓といって、ファーストネームとラストネームの間にミドルネームの一つとして旧姓を挟むことができます。
ジョンソンさんと結婚したメアリー・スミスさんが「メアリー・スミス・ジョンソン」を名乗ることが可能なのです。
この方法だと、こどもから見たときに母の名前に母方の姓が残っているので、母系を辿りやすくなります。
ファミリーツリーでも、父系母系両方の枝が平等に伸ばせます。
各国の戸籍事情 中国の戸籍は二種類あった
さて、諸外国ではファミリーツリーを描くとき、日本で家系図を作成するときのように「戸籍」を辿ることはできるのでしょうか。
じつは、いわゆる「戸籍」があるのは、現在、日本と中国、台湾だけです。
韓国には日本に統治されていた時代から戸籍制度がありましたが2007年で撤廃されました。
戸籍に代わるものとして「住民登録番号」が運用されています。
中国の戸籍は「農業戸籍」と「非農業(都市)戸籍」に分けられていました。
「農業戸籍」が約6割、「非農業戸籍」が約4割。
農村から都市部への人口の流入を制限するために1950年代後半に導入されました。
都市部に転入しても戸籍が取得できないことから、医療・福祉・教育・住宅購入などが制限され、中国の社会的格差を生んたのでした。
それを受けて中国政府は2016年に戸籍を一本化しました。
韓国と同じく、かつて日本の統治を受けていた台湾にも戸籍制度があります。
現在では、身分登録と住民登録を併せ持つ一元化した戸籍を政府が管理しています。
事務「戸政事務所」をいう役所が行っており、この戸政事務者は戸籍の管理を専門に行っています。
戸政事務者は、市単位の地方自治体ごとに置かれています。
欧米各国の戸籍
アメリカには「家」を基本にした戸籍はありません。
「個人」を基本としたいわば「個籍」制度となっています。
国民一人一人に、社会保険番号(Social Security Number)に代表される「個人を特定する」番号による登録がなされます。
社会保障を受け、納税するために個人を特定する唯一の方法です。
スウェーデンでの住民登録実務は教会が行っていた
スウェーデンでは1571年以来、教会が住民登録の実務を行っていました。
1947 年、世界に先駆けて個人番号制度を導入しましたが、教会の実務遂行は1991年に国税庁に移管されるまで続きました。
他の北欧諸国、ノルウェー、フィンランド、デンマークもスウェーデンにならい、住民登録番号制度を採用しています。
ヨーロッパでは他に、イタリアとオランダでは納税者番号、ベルギーでは社会保障番号が運用されています。
ドイツとフランスは戸籍に似たスタイルで管理
ドイツでは「家族簿」という家族単位の身分登録制度が用いられています。
19世紀初頭から教会の管理によって始まり、1875年以降は官庁が管理しています。
日本の戸籍と似た面がありますが、ドイツの家族簿にはさらに学位や職業、宗教なども記載されています。
ドイツと日本の国民性には通じるものがある、といわれます。
家族単位で作られるドイツの家族簿と日本の戸籍。
こんなところにも類似性が現れているようです。
フランスでは国民全員が「市民籍」というものを持っています。
これは家族単位ではなく、あくまでも個々人の出生、結婚、離婚、死亡が記載されるもの。
また16歳になるとすべての人に身分証明書が発行されます。
イギリスでは10年に一度の詳細な国勢調査が行われる
イギリスにはドイツやフランスのような家族や個人についての登録制度はなく、ヨーロッパの他の国々と同じように社会保障番号や住民登録で管理されています。
その代わりに、ということでもありませんが、イギリスでは、Census(センサス)という国勢調査が10年に一度、1のつく年に行われます。
個人についての調査結果は100年間は封印された後、公開されます。
この国勢調査は1801年に始まったので、100年前以降、そこまで遡って家系図を見ることができるそうです。
情報の提出は義務化されていて、提出しなかったり、虚偽の情報を記入したりした場合、最大で1000ポンド(約15万円)の罰金が科されます。
ことし2021年も「1がつく年」で3月に実施されました。
今回の調査で初めて、16歳以上を対象に性自認に関する任意の質問が入りました。
「出生時に登録された性とあなたの性は一致していますか」という問いです。
インターネットによる情報提出を優先させたことも初めてでした。
外国の戸籍と比べた日本の戸籍
以上、中国、韓国、台湾、ヨーロッパ諸国、イギリスの戸籍や個人番号登録制度の概略を見てきました。
これらの国々と比べると、日本の戸籍が世界の中で特殊ともいえる形式で作られていることがわかります。
選択的夫婦別姓制度や同性婚の導入がなかなか進まないなど、世界からの遅れと指摘される面もあるようです。
ただ、わたしたちが家族の歴史を辿るための手がかりとして見るならば、日本の戸籍は高いレベルで応えてくれるといえそうです。