2024.01.17
介護に役立つ家系図「ジェノグラム」
介護に役立つ家系図「ジェノグラム」
家系図の作成に興味を持たれる年代の方々のなかには、
親御さんやご親族の介護に
取り組んでおられる方もいらっしゃることでしょう。
まずはおつかれさまです、
と本ブログからも労いの気持ちを送らせてください。
社会全体から考えれば、
介護に携わっている方々には、
ご親族やプロフェッショナルを問わず、
感謝の言葉こそふさわしいと思います。
ありがとうございます。
さて今回のブログでは、
介護の現場で役立つ
家系図「ジェノグラム」についてお届けします。
「介護に家系図?」と意外な感じを持たれた方も、
どうぞご一緒に、調べて参りましょう。
家族構成や関係性をわかりやすく表したジェノグラム
ジェノグラムの考案者は
アメリカのソーシャル・ワーカーである
アン・ハートマン。
1970年代の末に作られたといいますから、
歴史のあるものですね。
ハートマンは、
児童福祉の分野において、
社会福祉が必要な個人の問題には、
本人を取り巻く家庭環境や
家族との関係性が大きく影響することを知りました。
援助の際には本人だけでなく
家族全体を視野に入れたアプローチが有効と考え、
クライアントの家族構成を
効率よく記載できる方法として
ジェノグラムを考案したのです。
ジェノグラムを介護や
医療・福祉関係者が共有することで、
クライアントのケアの充実がはかれることがわかり、
全米から海外へと広まっていきました。
現在、介護の現場で作られているジェノグラム
現在も医療や福祉の分野で
ジェノグラムが使われることが多く、
とくに介護の現場では介護施設に
入居の際のフェイスシート
(利用者の名前や家族構成などの基本情報をまとめた書類)や
ケアプランを作るための
アセスメントシートなどに記載されます。
適切な介護サービスを提供するには、
介護対象者の個人情報と
家族関係を把握する必要がありますが、
高齢者の場合は家族関係が複雑なことも多く、
情報を文章だけで説明するのは煩雑になってしまいます。
また、介護サービスには多様な業種や組織が関わるため、
誰が見てもすみやかに理解できることが求められます。
そこでジェノグラムの活用が勧められているのです。
実際のジェノグラムと活用の実態
ジェノグラムの一例
◯は女性で□は男性、◎が本人、
黒く描かれているのは故人です。
通常の家系図に比べるとずっと簡素で
本人に現在関わりのある人物に限って
表記されているのがわかります。
また離婚・再婚の履歴や
内縁関係や非嫡出子なども、
本人に関する必要な情報として記載されます。
ジェノグラムは介護を受ける人の
家族構成の「見える化」といえるでしょう。
介護対象者本人を中心とした
家族構成をシンプルな記号にし、
マップのようにフラットに並べて分析することで、
家族間の関係性やそれぞれの家族の立ち位置が
把握しやすくなります。
家族による介護がどこまで可能か、
在宅介護かあるいは介護施設への入居が適当であるか、
なども、家族自身を含め、
複数の医療従事者、ケアマネジャー、
介護施設の担当者などで客観的に検討することができます。
また、その家族特有の問題も見えてきて、
周囲からの援助を受けやすくなるでしょう。
現在の介護の状況から、
将来の看取りを迎える時期に至るまでの
家族の関係性を把握するためにも使うことができ、
介護対象者本人が残された人生を
安心して安全に暮らしていけるよう、
生活環境を整えるための有用なツールになります。
ジェノグラムは介護従事者にとっては、
適切なケアプランを立てるための重要な情報です。
家系図や記号の意味にとらわれずに、
介護対象者の介護における
「隠れた課題」を顕在化させる視点を
養うことが大切だとされています。
この「隠れた課題」は、
家族構成および家族、
社会との関係性の中で初めて改善されます。
わたしたち家族側も彼らの助けを借りながら、
介護対象者への適切な介護という共通の目的のために
惜しまず協力していきたいものです。
簡素だから自分でも描けそうなジェノグラム
シンプルでわかりやすいジェノグラム。
ノートとペンがあれば、
いますぐにでも
自分のジェノグラムが描けそうですね。
生まれてから亡くなるまで、
家族とのつながりが切れることはありません。
そして故人となった家族とも、
関係の記憶は続くのです。
介護にあたって、
親御さんとご自分、
ごきょうだいの家族の歴史を見直すためにも、
ジェノグラムは役立つでしょう。
介護経験者が口を揃えていうのは、
家族間での情報の共有の大切さです。
とくにコロナ禍にあって、
介護にも以前にはなかった
さまざまな問題が生まれてきています。
ジェノグラムでの自分たちの立ち位置を
お互いに確かめながら、
コミュニケーションを
円滑に取っていきましょう。
家系のルーツを辿る家系図とジェノグラム。
目的も用途も違いますが、
わたしたち自身と家族とが、
いまを充実して生きるためのマップ、
という意味では、
同じ役割を果たしてくれるのかも知れません。