2022.10.25
内閣府によるアンケート 婚姻した場合の名字・姓に関する考え方について①
内閣府によるアンケート 婚姻した場合の名字・姓に関する考え方について①
結婚して姓を変えるのは女性側が90%以上
結婚後の姓について、みなさんはどのようにお考えでしょうか。
お互いを人生の伴侶として選び、
結婚をすることは厳かな選択です。
その際に、
男性か女性の一方は
相手の姓に改めなければならないのが
現在の我が国の民法による決まり。
女性が改姓する割合は90%を超えています。
2020年に朝日新聞が行った全国世論調査によると、
69%が夫婦別姓に賛成。
男女別で見ると、
男性は66%、女性は71%が
夫婦別姓を望んでいました。
たしかに、
結婚後も働く女性が増え続けている現代において、
改姓が女性に与えている
不便や不都合は大きなものとなっています。
また名字が個人のアイデンティティの拠り所
となっているのであれば、
改姓が精神に与える影響への配慮も必要でしょう。
法務省では平成3(1991)年から
法制審議会民法部会(身分法小委員会)で
婚姻制度等の見直し審議を始めました。
5年後の平成8(1996)年、
法制審議会は「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申。
そのなかで、
選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)
の導入が提言されています。
以来26年。
その年に生まれたこどもも結婚する年頃となりましたが、
選択的夫婦別氏制度の導入はまだなされていません。
いま、国民は選択的夫婦別氏制度について
どのように考えているのでしょうか。
あなたにとって「名字・姓とはどういうものか」
令和3(2021)年12月に内閣府が行った
「家族の法制に関する世論調査」のうち、
「2.婚姻した場合の名字・姓についての考え方」
を参照します。
母集団は全国の市町村に居住する
満18歳以上の日本国籍を有する人で標本数は5,000人です。
https://survey.gov-online.go.jp/r03/r03-kazoku/2-2.html
家族と名字・姓に対する意識について、
「名字・姓とはどういうものかと思うか」
という問いに対し、
「先祖から受け継がれてきた名称」
を挙げた人の割合は45.8%、
「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
を挙げた人が42.9%と
高かったようです(複数回答)。
以下、
「夫婦を中心とした家族の名称」(31.2%)
「単なる名称にとどまらない、
自分が自分であることや人格の基礎」(18.5%)
となっていました。
都市規模別に見ると
小都市・町村で「先祖から受け継がれてきた名称」
を挙げた人の割合が高くなっています。
また男女別に見ると、
男性は「先祖から受け継がれてきた名称」
を挙げた人の割合が高く、
女性は「夫婦を中心とした家族の名称」
「単なる名称にとどまらない、
自分が自分であることや人格の基礎」
を挙げた人の割合が高くなっていました。
年齢別に見ると
「先祖から受け継がれてきた名称」
「夫婦を中心とした家族の名称」
を挙げた人の割合は
70歳以上で高くなり、
「他の人と区別して自分を表す名称の一部」
を挙げた人の割合は
18歳から29歳で高くなりました。
婚姻によって名字・姓を変えたことの不便や不利益
婚姻によって
名字・姓を変えた人に
なんらかの不便・不利益はあると思うか
という問いに対しては、
「なんらかの不便・不利益があると思う」
と答えた人の割合は、52.1%、
「なんらの不便・不利益もないと思う」
と答えた人の割合は47.5%でした。
不便・不利益があったと答えた人のほうが少しだけ多かったものの、
大差はないという結果になっています。
都市規模別に見ると、
「なんらかの不便・不利益があると思う」
と答えた人の割合は
大都市で高くなっています。
働く女性の割合との相関関係が
考えられるかも知れません。
性別に見ると
「なんらかの不便・不利益があると思う」
と答えた人の割合は女性で、
「なんらの不便・不利益もないと思う」
と答えた人の割合は男性で
高くなっています。
「不便・不利益」とは具体的になにか
「なんらかの不便・不利益があると思う」
と答えた1503人に具体的に不便・不利になると思うものを聞くと
「名字・姓を変更した側のみに
名義変更の負担があるなど、
日常生活上の不便・不利益がある」
と答えた人が83.1%と
もっとも高い割合を示しました。
銀行口座やクレジットカード、
健康保険、年金、パスポート、免許証、マイナンバーカード、
生命保険、自動車保険、などなど、
名義変更が必要となるものは枚挙にいとまがありませんね。
それを結婚で姓を変えた側だけが負担するというのは、
たしかに不便であり、不利益に違いありません。
変えなかった側にも理解してもらいたいところです。
また、
「仕事の実績が引き継がれないなど、
職業生活上の不便・不利益がある」
と答えた人は34.5%いました(複数回答)。
名字が変わると仕事の実績が引き継がれないというのは、
法制上だけではなく、
社会全体の受け容れの問題でもあるのでは。
また、
「実家の名字・姓を残せなくなることなどから、
婚姻の妨げになる」
という回答が27.9%、
「自己喪失感が生じたり、
プライバシーが公になったりすることで
心理的負担が生ずる」が
13.5%ありました。
きょうだいの数が減っていることが一因となり、
家系が途絶えるケースも少なくないのでしょう。
「家族の法制に関する世論調査」について、
次回のブログにも続きます。