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2021.04.15
戸主(こしゅ)ってご存知ですか?かつての『家制度』での戸主の役割や家族相続人の順位って?

家系図作成のために戸籍をさかのぼっていくと、『戸主』(こしゅ)という記載のある戸籍が必ず出てきます。

いまはもうない考え方ですが、この『戸主』とはいったい何なのでしょうか?

日本の家族のあり方にも重大な影響のある『戸主』について解説します。

 

戸主ってなんだろう?


『戸主』というのは、かつての日本の『家制度』(いえせいど)固有の仕組みです。

『家制度』とは、江戸時代の武士の家父長制を中心とした家族のあり方をベースとした考え方です。

長男が全財産を代々承継していくことで「家」を守り伝えていくための仕組みと言えるでしょう。

明治31年7月16日に施行された『民法』(旧民法)では、この『家制度』の考え方に基づいて日本の家族制度を規定しました。

戸主は家長として、家族に対して次のような「戸主権」(こしゅけん)を有していました。

 

【戸主権】

■家族に対する扶養義務

■家族の婚姻・養子縁組に対する同意権

■家族の入籍又は去家に対する同意権

■家族の居所指定権

■家族の入籍を拒否する権利

つまり、家族を統率して様々な指示を与えたり、同意権を持つ代わりに、家族を守る責任を負うということです。

家業を代々守って承継していくためには都合の良い仕組みだったと言えるでしょう。

 

旧民法における家督相続


明治31年7月16日から昭和22年5月2日までに相続が開始した場合には、『旧民法』が適用されることになります。

旧民法では、戸主に相続が発生した場合には『家督相続制度』によって、一人の家督相続人がすべての財産を単独で相続することになっていました。

いまのように相続人全員で遺産分割協議をしたり、遺言を遺したりすることもなく、自動的に全財産を家督相続人が相続します。

家督相続が開始するのは、次のような場合です。

 

【家督相続の開始】

①戸主が死亡したとき

②戸主が隠居したとき

③戸主が婚姻して戸籍を離れるとき

④女戸主が入夫婚姻をして夫に戸主を譲るとき

⑤入夫婚姻により戸主となった夫が離婚して戸籍を離れるとき

⑥戸主が日本国籍を失ったとき

*入夫婚姻:女性が戸主である場合に、女戸主と婚姻することを「入夫婚姻」といいます。その場合、婚姻した男性は妻の氏を名乗り、原則として夫が戸主になります。

 

家督相続人には誰がなる?


では、『家督相続人』になるのは誰なのでしょうか?

家督相続人は1人ですので、下記のルールに従って家督相続人が決まります。

なお、 旧民法では家督相続を放棄することは認められませんでした。

 

■親等の近い者が優先■

■男が優先■

■嫡出子が優先■

年長者が優先■

つまり、下記のような順位で家族相続人が決まります。

1.嫡出の男子(戸主の妻から生まれた男子)

2.庶出の男子(戸主が認知した男子)

3.嫡出の女子(戸主の妻から生まれた女子)

4.庶出の女子(戸主が認知した女子)

5.私生子の男子(私生児の男子)

6.私生子の女子(私生児の女子)

 

 

ご隠居さんって?


テレビドラマの水戸黄門は「ご隠居」って呼ばれていましたよね?

旧民法では、満60歳になると、戸主は『隠居』して家督を譲ることができました。

戸主が隠居すると、家督相続人が新しい戸主となったことを届け出て戸籍に記載することになります。

なお、女戸主には隠居の年齢制限はなく、いつでも隠居ができました。

女性の戸主はあくまで一時的なもので、男性の戸主候補者が現れれば交代する前提だったのだと思います。

 

まとめ


現在の家族・相続の制度とはずいぶん異なりますよね。

当然ですが、現在では二男であろうと女性であろうと子の権利は平等ですし、戸籍の筆頭者には家族に対して何か特別の権限を有するようなことはありません。

男子、長男を特別扱いして「家」を承継していくような『家制度』は、日本国憲法に反するとして廃止されました。

ただ、今でも農家では土地を承継していくために、かつての『家制度』に近いような相続を事実上行っています。

土地が相続人に平等に分割されてしまえば、農業は成り立ちませんから、これはやむを得ませんね。

 

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【近藤】

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