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2023.11.16
日本の額、和額について

日本の額、和額について

 

前回のブログでは、

ヨーロッパとイギリスの額装の歴史を調べてみました。

 

今回は、わたしたちの国、

日本の額を見ていきたいと思います。

まずはその定義から。

 

西洋の額に対し、

日本で生まれ独自の変遷を

たどっていまの形となった額を

「和額」といいます。

 

和額には

日本画、水墨画、書、色紙、短冊、

などを入れます。

 

洋額との区別として

「紙貼りあるいは縁取りした下地へ

裏打ちした本紙(作品)を張り付け、

これに枠をつけた額」

のことを一般的に指しますが、

境界が難しいため、

本紙の内容によって呼び分けるケースもあります。

 

 

 

日本独自の様式

 

日本独自の額の様式として

扁額欄間額、雲版(うんばん)、

硯屏(けんびょう)などが形のルーツとしてあります。

 

扁額の「扁」の字は「戸」「冊」からなり、

表札の意味を持ちます。

 

神社の鳥居に掲げられた額を

ご覧になったことはありませんか。

 

あれが扁額で、

鳥居の他にも建物の内外や門などの

高い位置に掲げられ、

書かれている文字は

その建物や寺社の名前であることが多いのですが、

建物に対する創立者の思いなどが

記されることもあります。

 

欄間額は「横長額」「道風型」ともいわれ、

一般に書や水墨画に用いられます。

 

また掛け軸を額装する場合もあります。

 

これもお寺や古い日本家屋の欄間で

ご覧になったことがあるのではないでしょうか。

 

おじいちゃんの家にあった、

なんていう方もいらっしゃるかも知れません。

 

雲版は色紙、短冊などを入れて壁に掛ける額で、

形は丸いのが普通で、四角のものもあります。

 

表面にはガラスを嵌めます。

 

硯屏とはすずりのそばに立てて

塵やほこりを防ぐ小さなついたてのことですが、

そこに絵や書を嵌め込んで額のようにして飾ることがあります。

 

 

 

東大寺西大門の篆額から始まった和額の歴史

 

篆額(てんがく)とは

石碑などの上に篆書で掘られた額ですが、

最古のものは8世紀、

東大寺の西大門に掲げられた

金光明四天王護国之寺」です。

 

額縁というより表札、

つまり情報を示すものでした。

 

16世紀にキリスト教が伝来すると、

祭壇画を室内に掛ける文化も入ってきました。

 

前回のブログでも触れた宗教画を可動性のある

モールディングで囲ったヨーロッパの額ですね。

 

さらに17世紀に中国から黄檗宗が伝来し、

文人趣味が隆盛します。

 

黄檗宗臨済宗曹洞宗と並ぶ

日本の三禅宗の一つで、

中国から来日した隠元隆琦により

承応3(1654)年に始まりました。

 

黄檗宗は社会福祉や医学など、

近世中国の文化も伝えました。

 

額に関しては、

文人趣味によって南画や書などを飾るために

装飾性が確立されます。

 

黄檗宗の伝来は和額の発達にとって

大きなエポックとなりました。

 

さらに、日本伝統の表装の技術によって

作られた紙類が和額の骨格を形成していきます。

 

明治以降、洋額の輸入によって、

日本独自の額装が認知されました。

 

第二次世界大戦後には

和額と洋額の折衷された日本画額の考案など、

そのスタイルが定着していきます。

 

 

和額の形式

 

以上、和額の様式と発祥から

現代までの歴史を早足で見てきました。

 

日本ならではの伝統技術と

職人の感性によって作り上げられた和額には

存在感があり魅力的です。

 

日本家屋にはもちろん、

いまのわたしたちの生活空間にも

馴染むものではないでしょうか。

 

和額には、額の形式・枠の色・下地に貼る表の組み合わせによって

様々な種類があります。

 

「ベタ」は襖のような組子に表張りをして

本紙を直貼りにしたものです。

 

額の一般的な形で、

作品と表面を覆うアクリルとの距離がないため、

凹凸のないフラットな状態に仕上がります。

 

その他にも、本紙を下地とは別の板に貼り、

本紙がまるで浮いているかのように見える「浮出」と、

浮出とは反対に本紙がはめ込まれている状態の

「沈み(落し)」という形式もあります。

 

 

枠の色、素材

 

額装の縁(枠)の種類や塗りの色にも様々なものがあり、

作品に合わせて似合うものを選ぶ必要があります。

 

本桑

茶道具の世界では最高級の素材といわれており、現在では大変入手が困難な素材です。

塗装をせず木目を生かした色が魅力的です。

 

多くの本紙に合う枠の色として頻繁に用いられます。

艶がある物や艶消し等の塗りがあります。

 

茶系

たとえばチーク材など、木目が見える色で、黒塗りと比較して簡単に塗装が行えます。

 

白木

透明なニスなどで塗装されており、木目の美しさがより際立ちます。

 

朱塗

とても鮮やかな朱色で塗られており、派手な本紙や表と組み合わせると効果的です。

 

 

作品を引き立てて枠と調和させるマット

 

作品の周りを飾るマットにもさまざまな種類があります。

こちらも作品とマッチするものを選ぶことが大切です。

 

金箔平押

 

金の箔を押した鳥の子紙で、存在感と高級感のある丁寧な仕上がりが特徴です。

金箔の種類によって、様々な印象に変える事ができます。

平押しの他に絹目や揉みなどがあります。

 

金砂子など

 

細かく砕いた金をあしらった鳥の子紙で、金箔よりも落ち着いた雰囲気があります。

金砂子や梨地等があります。

 

銀箔平押

 

銀の箔を押した鳥の子紙で、金箔とはまた違った趣のある雰囲気に仕上がります。

 

緞子裂(どんす)

 

表装に多く使用されている織物で、様々な色柄があり、それぞれの作品に似合う物を選ぶことができます。

一般的な額装に多く使用されています。

 

 

 

和額は日本独自の発祥と歴史を持ち、

日本画や水墨画、書などを装って、

建物の外から室内までを飾ってきました。

 

もしかするとあなたの行きつけの居酒屋さんのメニューも

和額に収まっているかも知れません。

和額を知ることで

日本文化を身近なものにしていただけたら幸いです。

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