2023.10.18
日本酒がおいしい季節に日本酒の歴史を
日本酒がおいしい季節に日本酒の歴史を
秋が深くなってきました。
秋刀魚、秋鮭、きのこ類とくに松茸、
さつまいも、梨にぶどうに柿に栗。
旬のおいしいものがどんどん浮かんできますね。
日本に生まれてよかった、といちばん思う季節は秋。
そういいきってもよいのではないでしょうか。
お酒をたしまれる方はワインや日本酒が恋しい頃かも。
きょうは日本の秋に特化して、
日本酒の歴史をひもといてみましょう。
日本最初のお酒は果実酒だった
日本人がいつからお酒を飲んでいたのか、
日本人が最初に飲んだお酒はなんだろう、
というところまで遡ると、
意外にも日本酒よりもワインに近いお酒が出てきました。
縄文時代中期(紀元前4,000年〜3,000年頃)には
お酒が造られていた痕跡が残っているそうです。
長野県の井戸尻遺跡にあった土器の中に、
ヤマブドウやキイチゴの種が発見されたことから、
日本で最初に造られたお酒は果実酒だったのでは、
といわれています。
フルーティな赤紫色のお酒だったのでしょうか。
おいしそうなイメージですね。
お米を使った日本酒のはじまり
それでは
お米を使った日本酒が造られるようになったのは
いつ頃からなのでしょう。
考古学上、稲作自体は縄文時代以前から
稲の種まきはすでに行われたと考えられているそうです。
古墳時代に田が作られるようになり、
弥生時代に水耕栽培の技術が日本に広まっていきました。
お酒は糖分を酵母に分解することによって醸されるのですが、
それにはまずお米のでんぶん質を糖に変化させなければなりません。
縄文時代以降、
お米を口で噛んで唾液のアミラーゼで
でんぷん質を糖化させてつくる
「口噛み酒」という製法があったようです。
その後4世紀頃には麹菌を使って
でんぷん質を糖化させる方法が生まれました。
奈良時代から戦国時代まで
奈良時代初期にまとめられた書物
『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』には
「大神に供えていたお米に
カビが生えてしまったので、酒を造り供えた」
という記述があるそうです。
この「カビ」が米麹ではないかとされ、
この頃には米麹を使った酒造りがすでに
広まっていたと考えられるそうです。
飛鳥時代から奈良時代は
農民には禁酒令が出されていましたが、
豊作を祝う儀礼のときなどは許されていました。
また、平安時代までは、
お酒は朝廷でも造られていました。
しかし、国の政治が混乱していくにつれて、
朝廷で酒造りを行っていた技術者が野に降り、
寺院や神社また酒屋といった場所にも
広まっていったそうです。
鎌倉時代になると商業が盛んになり、
日本酒はお米と同等の価値のある商品として
流通するようになりました。
室町時代には京都の市内に
小規模な酒屋が数百軒も生まれました。
年中酒造りが行われる一方で、
奈良などの寺院で造る僧坊酒が
技術を牽引していきました。
室町時代から戦国時代には「火入れ」や「段仕込み」といった
現代の酒造りの原型ともされる技術が広まっていったそうです。
江戸時代には庶民も日本酒を飲めるように
戦乱の世が終わると、
一般的な農村でも小規模な酒造りが
行われるようになります。
しかし、
酒の市場が徐々に拡大するにつれて
大きな酒蔵も現れはじめ、
ついに江戸幕府によって
大規模な酒造業の統制が敷かれました。
これを「酒株制度」と呼び、
酒税の徴収も並行して行われ、
酒造りに一定の制限が設けられました。
その一方で酒造りの普及に従って、
日本酒の販売も盛んになり、
庶民にも身近なものへと変わっていきます。
販売されていたのは清酒やどぶろくですが、
小売店のなかで飲酒もできたそうです。
いわゆる「角売り」の始まりですね。
また、江戸時代中期には
お燗をする道具やお猪口が広まり、
燗酒を楽しむ庶民が増えたといわれています。
江戸落語にもお酒が登場する噺がいくつもあります。
なかでも「芝浜」はお酒が重要なファクターとなっています。
夫婦愛に感動すること請けあいの人情噺です。
明治時代から昭和時代まで
明治時代になると「酒株制度」が廃止され、
酒蔵を創業する人が一気に増えました。
しかし、インフレーションが進み、
酒税が強化されて酒造業者の負担も増加して、
明治後期には半数まで減少してしまったのです。
しかし、日本酒は一般家庭にも普及し、
一升瓶による流通も始まりました。
明治以降、酒造りの技術の進歩も著しく、
温度計が普及し、
高度な精米機が開発され、
ホーロータンクも導入され、
現代の日本酒醸造につながる発展を遂げました。
しかし
昭和16(1941)年に第二次世界大戦が勃発、
原料である米にも統制がかかり、
酒造りは他の産業と同様に低迷しました。
この時代、
日本酒の風味に似せた合成清酒が多く製造され、
出回ることにもなりました。
戦後から現代へ
第二次世界大戦が終わり、
日本は復興期からさらに
高度経済成長期を迎えます。
日本酒の消費量も増加、
酒造りの機械化が進み、
空調設備の導入によって
年間を通じて日本酒を造ることが可能になりました。
中小の酒蔵は大手との差別化を図るため、
純米酒や吟醸酒、本醸造酒などの製法に
重点を置きはじめました。
バブル期には吟醸酒ブームが起こり、
日本酒に馴染みのなかった層の人気も集めました。
平成2(1990)年には
「清酒の製法品質表示基準」が適用され、
ラベルへの表示が義務付けられました。
この時期から生酒やにごり酒、
スパークリング清酒などの製品も増えて、
日本酒の多様化が進み、現在に至ります。
この秋の夜長にはどの日本酒にしましょうか。
ゆっくり選んでおいしくいただきたいです。