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2021.11.04
最初の誕生パーティは織田信長? 日本で誕生日を祝うようになったのは最近のこと

生後1か月で「2歳」?

「オメタン!」のメッセージとともに「タンプレ」を贈られる日。

それは誰でも必ず持っている大切な日、誕生日ですね。

若い子の間では言葉はどんどん変わっていきますから、「オメタン!」(お誕生日おめでとう!)も「誕プレ」(誕生日プレゼント)も、もはや古くなっているかも知れません。

それでも誕生日のメッセージやプレゼントのうれしさはどの時代でも、またいくつになっても変わらないものではないでしょうか。

 

しかし、わたしたちが当たり前と思っている、この誕生日を祝う習慣は、昭和25(1950)年頃までは日本では一般的ではなかったようなのです。

それ以前は、お正月元旦に、日本中の人が一斉に一つ年を取っていました。

生まれたときにすでに「1歳」なので、12月に生まれた赤ちゃんでも次のお正月を迎えると「2歳」になるわけです。

 

いまの社会では「生後1か月」といわれる新生児が「2歳」。

現代のわたしたちにはたいそう違和感のあるこの数えかたが、当時は一般的で、人々は「誕生日」というものをあまり意識していなかったようです。

ところがじつは、誕生日という概念が日本にもたらされたのは、昭和、大正、明治よりもっと昔、安土桃山時代のことでした。

 

日本で最初に誕生日を祝った武将

16世紀半ば日本にやってきたカトリック司祭で宣教師のルイス・フロイスは、織田信長や豊臣秀吉と会いましたが、信長には布教を許され、後に『日本史』を著しました。

そのなかに、信長が天正7(1579)年5月11日に安土城で自らを神とする儀式を行い、自身の誕生日を祝祭日と定めて、参詣する者には厳正利益が叶うとしたという記述があります。

日本最初の誕生祝いというにはあまりに豪胆でしょう。

新し物好きでヨーロッパ文化に強い関心を抱いていた信長らしくもあるエピソードとして聞くことができます。

 

ただ、フロイスがこの記述をしたのは信長の死後であり、このような神をも恐れぬ驕慢な行いゆえに滅ぼされたのだという、カトリック信仰からの見解を正当化するために書かれたものではないかという研究も現在ではなされているようです。

 

明治時代に政府が満年齢導入を図るも

信長が没して約300年後、日本全体が新し物好きになり欧米文化を積極的に取り入れようとしていた明治時代。

それも下って明治35(1902)年に、政府は「年齢計算ニ関スル法律」を施行しました。

これによって国民に誕生日ごとに年齢が一つずつ増えるという概念を浸透させようとしたわけですが、結論からいって、それは失敗に終わりました。

 

家族全員が元旦に年を取るという親代々の習慣の前には、法律は力及ばずといったところだったのでしょうか。

こどもの初節句や七五三のような年祝いを喜び、年長者の還暦や古希、喜寿などを寿ぐ日本人の感性には誕生日祝いはなかなか馴染まなかったのかも知れません。

 

昭和25年、再び法制化

大正時代を過ぎ、第二次世界大戦を経た後も満年齢は広く一般に普及しませんでした。

そこで政府は昭和25(1960)年1月1日、改めて「年齢のとなえ方に関する法律」を施行しました。

ここから、おのおのが誕生日に年を重ねる満年齢が、ようやく広まりはじめたのです。

 

その後の高度経済成長につれ、一般家庭でもこどもたちの誕生会を開くようになりました。

いまの中高年世代でも、誕生日ケーキに立てたろうそくの火を吹き消すところを写真に撮ってもらった経験のある人は少なくないでしょう。

 

誕生日ケーキが丸いのはなぜ?

ところで誕生日ケーキの起源は、なんと古代ギリシャにあるそうです。

月の女神アルテミスの誕生日を祝うために月を模した丸いハニーケーキを焼き、ろうそくの火を灯して月の光に見立ててお供えしたのだとか。

ということは、誕生日ケーキのろうそくに込める願いごとはギリシャの女神アルテミスが聞いてくれるのかも知れませんね。

 

こどもの誕生日を祝う習慣はドイツから始まったようで「キンダーフェスト」といい、ケーキを切り分けてみなで食べていました。

しかし、それは誕生日にこどもを襲うという悪霊から守るためだったともいわれています。

誕生日ケーキに1日中ろうそくを灯し、悪霊を退散させて、夕食後に「無事でよかった」とケーキを食べたのです。

「ほんとうは怖い」といわれるグリム童話を生んだお国柄でしょうか。

  

誕生日に年を取る瞬間

 ともだちや大切な人に、他の誰よりも早く誕生祝いを伝えたいと、日付が変わった瞬間にLINEやSNSでメッセージを送る。

近年よく見る光景ですが、実際にわたしたちが年を取るのは誕生日のうちのいつなのでしょうか。

 

法律は意外で厳密な決めごとをしていました。

わたしたちが一つ年を重ねるのは誕生日当日ではありません。

「誕生日前日の午後12時」なのだそうです。

「でもそれって、誕生日当日の午前0時と同じということでは」

 

その疑問は正しい。

しかし、法制的には「誕生日前日に年を取る」ため、選挙権の取得などでは影響が出ることがあるとか。

 

だからといって、とくに大人の女性に「法律的にはきょう年を取るらしいよ」と誕生日前日にお祝いをいったら、喜ばれるより逆に機嫌を損ねてしまうかも知れません。

年を取る瞬間は、1分1秒でも遅らせたいのが女心というものではないでしょうか。

たとえ、前日の午後12時と当日の午前0時になるのが同じ瞬間でも。

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