2022.06.08
皇居に本籍を置く日本国民は2000人以上?
自由に選べる本籍地というものについて
家系図作成の最大の鍵は「本籍地」です。
先祖がどこに本籍を置いていたか。
それを辿っていくことが、
そのまま家系を遡ることになります。
何かの手続きで戸籍証明書を求められて、
本籍地が遠いことを
初めて知った経験のある方もいらっしゃるでしょう。
今回は、
そんな本籍と本籍地について、
改めて考えてみましょう。
結婚のときに自由に決められる
未婚のうちには子の本籍は親の本籍と同じです。
結婚するときに男女とも親の戸籍を出て、
二人の戸籍を一つにし、
本籍地も自分たちで定めてよいことになっています。
さらに、
日本の住所台帳に記載されている住所なら
どこを選んでもよいのです。
自分たちの新居を本籍地とするカップル、
夫の実家に置くカップル。
前者はナチュラルな決めかたとも、
後者はいまどき古風な決めかたともいえるでしょう。
どこでもいいならば、
と皇居の住所にするカップル、
思い出の場所としてテーマパークの住所に本籍を置くカップル。
なかなか思いきったことをしますね。
ちなみに皇居の住所は、
東京都千代田区千代田1番。
2000人以上が皇居を
本籍地にしているというデータも過去にはあったようです。
実際に皇居を本籍地にした人が挙げたメリットには、
- 覚えやすい、
- 戸籍証明書を取得するときにアクセスしやすい、
というものがありました。
現在はマイナンバーカードがあれば、
全国のコンビニで戸籍証明書が取れるようになりましたから、
アクセスの問題はクリアできています。
本籍地を現住所から遠い場所に置いても、
本人の場合は戸籍証明書の取得の手間は掛からなくなったわけです。
そもそも本籍地にはどのような意味が
皇居でもいい、
テーマパークでも大阪城でも甲子園球場でもいい、
という本籍地。
婚姻届を提出するときに決められるというのは、
新婚カップルにとって自由で楽しいイニシエーションかも知れません。
しかし、そもそも本籍地とはなんなのでしょう。
そんな適当に、とはいいませんが、
日本列島にダーツを投げるように決めてよいものなのでしょうか。
本籍地とは、
いまは「戸籍を保管しているところ」に過ぎなくなっています。
皇居を本籍地にしたのなら、
そのカップルの戸籍は千代田区で保管している、ということです。
戸籍の歴史をおさらい
日本で初めて本格的な戸籍制度が始まったのは明治5(1872)年です。
徴兵や徴税を目的とし、
本籍地と居住地は同一のものとみなされました。
その後都市化が進み、
本籍地を離れる人が多くなった明治中期に、
手続きの簡略化のために
「本籍は必ずしも住所地でなくともよい」
と改められたのです。
第二次世界大戦後、
戸籍は夫婦を基本単位とするものに変更されました。
国民健康保険や公的年金などの行政サービスは
住民票をもとに運用されるようになり、
日常生活で戸籍証明書を必要とする場面は減りました。
運転免許証もかつては本籍地が記載されていましたが、
道路交通法施行規則の一部改正により
2007年から順次ICカード化されたことによって、
本籍地は空欄となりました。
本籍地は自由に選べるが、移すことにはデメリットも
引っ越すときは役所で転出届を出し、
新しい住所のある市町村に転入しますが、
本籍を動かすことも可能です。
これを転籍といいますが、
じつはデメリットもあります。
それは相続のとき。
相続には亡くなった方の、
生まれてからの戸籍(除籍簿)が必要になります。
実のこどもであっても、
親御さんが実家の前にどこに住んでいたのか、
どこで生まれたのかを知らないことも少なくありません。
いざ相続となったとき、
本籍が移った道筋を辿るには手間と時間が掛かります。
子孫のためには転籍について
よく考える必要がありそうです。
戸籍の保存期間は150年
家系図を作成するにあたっては、
祖先の本籍地が最大の鍵、
と最初に書きましたが、
この鍵には有効期限があります。
現在、戸籍の保存期間は150年間と定められているからです。
2022年の150年前は1872(明治5)年です。
明治5年の一年前、
明治4年というと、廃藩置県がなされた年。
そして、戸籍法が制定された年でもあります。
この法律で作られた戸籍は「壬申戸籍」といい、
現在は閲覧できないものとなっていますが、
今年からはこの戸籍も保存期間を終えるということになります。
戸籍は一度廃棄されるともう取得できません。
家系図作成において、
一代遡れなくなるというのは大きな損失です。
家系図を作ってみたいとお考えの方は、
タイムリミットを意識されるようお勧めします。
結婚は入籍ではなく新しい戸籍の創造
結婚式や披露宴がままならない現在の状況で、
結婚するカップルは「入籍」というものを
より大切に思っていることでしょう。
ただ、さきほども書いたように、
結婚は相手方の戸籍に「入る」もののではなく、
戸籍を二人で新しく「作る」ものです。
自分たちそれぞれの本籍に込められた両親の思いや、
命をつないでくれたご先祖様への敬意を忘れずに、
二人自身の歴史の第一歩となる本籍地を、
よく話し合って選ぶことが望ましいでしょう。