2021.08.19
ご存知でしたか?神々の家系図
イエスの祖先は超長命
日本では旧約聖書はあまり馴染みがないと思いますが、もしも機会があったら、「創世記」の第5章をご覧になってみてください。
イブとともにエデンの園を追われたアダムから、箱舟を作って洪水を生き延びたノアのこどもたちに至るまでの11代の父系についてのみが記されています。
子を成した年齢はいちばん若いマハラレルとエノクでも65歳で、ノアは500歳のときに三人の息子を生んでいますし、他の祖先にも900歳代まで生きた人が複数いて、並外れた長命の家系だったようです。
キリスト教の外側から見ると、旧約聖書も一つの神話といっていいのかも知れません。
イエスの弟子たちによって書かれた福音書などからなる新約聖書には、イエスからアダムまでの家系を遡る記述があります。
大工の子として厩で生まれたイエスがイスラエルの王の子孫として正統な血筋を持った存在であると説くものですが、弟子によって辿りかたに相違があるようです。
オリンポスの神々の家系
ギリシャ神話の神々の家系はどうなっているのでしょう。
およそ紀元前15世紀から語り継がれた神々は、血縁と愛憎によって深く繋がれているようです。
最高神とされるゼウスを中心にきょうだい、妻、子、愛人のこどもたち「オリンポス12神」。
ゼウスのきょうだいには、デメテルという農耕と大地の女神、ヘスティアというかまどの女神、ポセイドンという海洋の神がいます。
ゼウスの正妻はヘラ。
嫉妬深いことで有名ですが、ゼウスの浮気癖もひどかった。
ヘラは軍神アレス、火山・炎・鍛治の神であるへパイストスを生みました。
以下の神々はゼウスの愛人(複数)のこどもたちです。
アテナは都市の守護神であり、知恵・工芸・戦略の神。
予言・芸術・音楽・医療の神アポロン。
伝令の神ヘルメスはフランス語では「エルメス」と発音します。
あのブランドのエルメスですね。
豊穣・葡萄酒・酩酊の神ディオニュソスは「バッカス」の名前でも知られています。
愛と美の女神アフロディーテの別名は「ヴィーナス」。
それぞれの神に愛と憎しみのストーリーがあって、ギリシャ神話は神の物語でありながら、とても人間味の濃いものとなっています。
ゼウスをめぐる複雑な人間関係を映す家系も、血統的にはシンプルでわかりやすい。
ヘラをはじめとして女神たちがみな力強い存在であるのも面白いところです。
古事記に見る日本の神々の家系
さあいよいよ日本の神々の家系を見てみましょう。
日本の神話が記されている最古の本は『古事記』です。
和銅5(712)年に太安麻呂が編纂し元明天皇に献上されました。
上中下の三巻で構成されていて、上巻(かみつまき)の記述が神々の物語にあたります。
イザナギとイザナミ、国生みのカップルの結末
日本の神話はイザナギとイザナミが結ばれて国を生むところから始まったような印象がありますが、『古事記』にはイザナギの曽祖父からの家系が書かれています。
曽祖父はウヒヂニ、祖父はオオトノヂ、父はオモダル。
イザナギは両親を同じくする妹のイザナミを娶ります。
アマツカミに国生みを命じられた二人でしたが、イザナミから先に声を掛けたことで育てられないこどもを生んでしまいます。
その後イザナギから声を掛けて大八島国(おおやましまぐに)、石、海、山野などの神々をつぎつぎと生んでいきました。
火の神を生んだことから命を落としたイザナミは黄泉の国へ。
イザナギは連れ戻しにいきますが、けして自分を見るなとイザナミにいわれたのに見てしまい、変わり果てた姿に恐れをなして逃げてしまいます。
怒ったイザナミはイザナギを追いかけ、イザナミは黄泉の国と地上との境の坂を大岩で塞ぎ、イザナミを退けるのでした。
死んだ妻を追いかける夫の物語はギリシャ神話にも見られます。
夫の名前から「オルフェウス型神話」と呼ばれ、世界各地に点在しているそうです。
振り返ってはいけない、見てはいけない、と妻にいわれて見てしまう夫も世界各地にいるわけで、これは夫婦または男女の本質を突いたストーリーなのかも知れません。
アマテラス、スサノオ、ツクヨミの姉弟
イザナギは妻イザナミを離縁し黄泉の国から地上に戻ってきました。
「なんと汚い国へいったのだろう」と阿波伎原というところで体を清めていたときのこと。
顔を洗うと、左目からアマテラスが、右目からツクヨミが、最後に鼻からスサノオが生まれました。
イザナギは三人の貴いこどもたちの誕生を喜んで、アマテラスに高天原の統治を、ツクヨミに夜の統治を、スサノオに海原の統治を任せました。
物静かなツクヨミと違い、やんちゃが過ぎる弟スサノオは母を慕って泣いてばかりいたために、父イザナギの怒りを買って神の国である高天原から追放されてしまいます。
スサノオの蛮行は収まらず、姉アマテラスは天岩戸を開いて中に隠れました。
高天原はすっかり暗くなり、ほうぼうで災いが起こるようになりました。
アイデアマンのオモヒカネの指揮のもと、神々は力を合わせて、天岩戸の前で鳥を鳴かせたり、鏡や勾玉の長い玉飾りを作ったり、占いをしたりしました。
そして力の強いアメノタヂカラオを岩戸のそばに立たせて、アメノウズメに踊らせ、他の神々は声を合わせて大笑いをしたのです。
楽しそうな様子に、アマテラスが天岩戸を少し開けて外をのぞこうとしたとき、アメノタヂカラオがその腕を取って引っ張りだしました。
こうして高天原に光が戻ったのでした。
きょうだい喧嘩も神々のそれとなると、世界が真っ暗になるなど大事が起こります。
神の血を引く王の家系
『古事記』では日本の神の家系はイザナギから七代を経て神武天皇へとつながるとされています。
アダムの血筋を引いたイスラエルの王の子孫イエス、イザナギの子孫神武天皇。
ゼウスも人間との間にたくさんのこどもを残しています。
神の血が人間へと流れ込むという神話のパターンが、この三つの家系にも表れているといえるでしょう。