2021.10.31
親族の呼びかたって難しいですよね。韓国語はもっと複雑なんです!
『愛の不時着』ご覧になりましたか?
Netflixやアマゾンプライムビデオなどの動画配信サービスの普及で、海外の映像作品が気軽に視聴できるようになりました。
コロナ禍で在宅時間が延びたことや、映画館にいくのが難しかったり、新作の封切りが延期されることが相次いだりしていることもあり、配信動画はわたしたちをおおいに楽しませてくれています。
なかでも『愛の不時着』や『梨泰院クラス』が大ブームとなって、女性を中心に韓国ドラマが人気。
時代物、現代物を通じて、ストーリー構成の巧みさとともに、人と人との関係や感情が肌理細かく描かれていることが韓国ドラマの魅力のひとつです。
韓国の人たちはよく呼びかけあう
韓国ドラマにハマってしばらくして気づくのは、会話の最初や途中に相手に呼びかける頻度が高いこと。
名前はもちろん、家族やともだちでも名字をつけてフルネームで呼んだり、逆に家族でなくても年長者には「おにいさん(おねえさん)」「おじさん(おばさん)」「おじいさん(おばあさん)」と親しみを込めて呼びかけます。
儒教がいまも生活に根付いている韓国社会。
それだけに目上への敬意や家族や親族間の情が大切にされていることが、相手への呼びかけからも感じられます。
ドラマや映画の日本語字幕では「おにいさん」「おじさん」などと簡略に表現されますが、じつは、男性が呼ぶときと女性が呼ぶときでは言葉自体が違い、「父方」「母方」でも違うというのも興味深いことです。
男性なら「ヒョン」、女性からは「アッパ」
学校や会社で後輩が先輩を慕い、先輩が後輩をよくかわいがるのも韓国の人たちの特徴です。
性別による扱いの差もほとんどありません。
ただ、呼びかけ方は男女で違います。
血のつながったきょうだいでも同様です。
男性がおにいさんや仲のいい男性の年長者を呼ぶときは「ヒョン」。
先輩なら「兄貴」と訳されたりしています。
女性の場合は「アッパ」といいます。
実の兄だけではなく、男性の先輩も「アッパ」、年上の恋人にも「アッパ」と呼びかけます。
日本だと、芸人さんの世界で年長者を「にいさん」「あにさん」と呼ぶことがありますが、女性の後輩が違う呼び方をすることはありません。
また、年上の恋人を「おにいさん」とはなかなか呼ばない。
文化の違いの面白いところです。
「おねえさん」も違います
「おねえさん」も「おにいさん」と同じで、男性が呼ぶときと女性が呼ぶときでは言葉が違います。
男性ならば「ナヌ」、女性からは「オンニ」です。
これもまた、実のおねえさん以外にも、親しい年長の女性を呼ぶときにも遣われます。
余談ですが、日本でいう「お局さま」。
職場にいらっしゃる少々怖い年長の女性。
韓国ドラマの字幕に登場したので調べたところ、「ワンオンニ」が「お局さま」に当たるようです。
「ワン」は「王」で「オンニ」は女性が呼ぶ「おねえさん」ですから、「ワンオンニ」は「王ねえさん」。
かなりの迫力がありますね。
またちなみに、弟と妹は「トンセン」で男女の区別がなく、おにいさんから呼んでもおねえさんから呼んでも「トンセン」です。
弟を「ナムトンセン」、妹を「ヨドンセン」と呼ぶこともあるそうです。
「父方」と「母方」の違い
「おじいさん」は「ハラボジ」、おばあさんは「ハルモニ」なのですが、これは父方の祖父母や血のつながらない年長者への呼びかけ方。
母方のおじいさんおばあさんには「ウェ」という接頭語がつきます。
つまり「ウェハラボジ」と「ウェハルモニ」になるわけです。
「ウェ」には「外の」という意味があり、母方イコール「外の」おじいちゃんおばあちゃん。
日本では嫁いだ娘が産んだこどもを「外(そと)孫」と呼ぶことがありますが、それと通じますね。
かつての日本でも家系が父方中心にとらえられていたことの表れといえるでしょう。
「おじさん」「おばさん」がややこしい
日本では、両親より年長の「おじ」「おば」を漢字を遣って「伯父」「伯母」と表し、両親よりも年少の「おじ」「おば」は「叔父」「叔母」と表します。
言葉と音は同じでも表記を見ることで両親の上のきょうだいなのか、下のきょうだいなのかわかるわけです。
韓国ではさらに、父方の「おじ」「おば」なのか、母方なのか、義理の関係の場合は父の姉妹の夫であるのか、母の姉妹の夫であるのか、という区別がなされます。
日本なら発声するときには、父方母方の別によらず、「伯父・叔父」も「伯母・叔母」も「おじ」「おば」の同じ音ですが、韓国では言葉自体が違い、義理の関係まで含めて、それぞれ違う音になります。
「おじさん」5種類、「おばさん」も5種類
まず父方。
「クンアボジ」が、おとうさんのおにいさんである「おじさん」。
「チャグンアボジ」が、おとうさんの弟の「おじさん」です。
おとうさんの姉妹の夫は、姉の夫か妹の夫かによらず同じ「コモブ」。
父方の「おばさん」は、おとうさんの姉妹が「コモ」。
おとうさんのおにいさんの妻が「クンオモニ」。
おとうさんの弟の妻が「チャグンオモニ」となります。
次に母方。
おかあさんの兄弟である「おじさん」は兄でも弟でも「ウェサムチョン」。
おかあさんの姉妹の夫である「おじさん」は、姉の夫も妹の夫も「イモブ」です。
おかあさんの姉と妹である「おばさん」はどちらも「イモ」。
おかあさんの兄弟の妻である「おばさん」は、兄の妻も姉の妻も「ウェスンモ」
「おじさん」も「おばさん」も母方のほうが父方より1種類ずつ少ないのは、やはり外戚関係であるからでしょう。
「いとこ」については母方のほうが一種類多い
最後に「いとこ」の呼び方ですが、父方の「いとこ」は「サッチョン」の一種類。
おとうさんのきょうだいのこどもならみな同じ呼び方をします。
自分も含め父方の家系のこどもたち全員が「サッチョン」のグループに属しているわけです。
母方の「いとこ」はおかあさんの兄弟のこどもを「ウェサッチョン」、姉妹のこどもを「イジョンサッチョン」と呼びわけます。
これはつまり、おかあさんの兄弟のこどもであれば、母の実家の父系のこどもであり、姉妹のこどもであれば、実家の外戚であるという区別でしょう。
父系を重視する韓国ならではですね。
また「いとこ」を実際に呼ぶときにはこれらの呼称は遣わず、「おにいさん」「おねえさん」のそれぞれの呼び方をしたり、名前を呼んだりするそうです。
韓国のドラマや映画では、冠婚葬祭の賑やかな様子もよく描かれますが、上のようなさまざまな呼び方が飛び交っているわけですね。
日本でもときにわずらわしさを感じさせる親戚とのつきあい。
あくまでもフィクションの世界で、ですが、お隣の韓国の人たちは感情豊かに楽しんでいるように見えます。