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2023.11.14
額装の歴史 ヨーロッパ・イギリス編

額装の歴史 ヨーロッパ・イギリス編

 

「家系図ラボ」ではお客様からの依頼で

家系図を作成しますが、

完成した家系図は額装してお届けします。

 

ご自宅に長い間飾っていただくことを考えて、

材料と作りのたしかな額を選び、

専門家の手で丁寧に額装してもらっています。

 

額は家系図をほこりや汚れから守り、

空気に触れないようにして劣化を防いでくれます。

 

額には見栄えをよくするためだけではない、

本来の役割があるのですね。

 

家系図の額を通じて、

わたしたちも額の大切さを改めて知ることになりました。

 

今回からの2回で、

そんな額と額装の歴史を紐解いてみましょう。

 

 

 

額の起源は宗教画の縁飾り

 

わたしたちが現在「額」として知っているものの

起源はルネサンス期のイタリアに遡ります。

 

古く宗教画では絵と額縁が一体化していました。

 

その後、絵をはめ込む形式の装飾された縁飾りが

宗教画を囲むのに用いられるようになります。

 

それらは「モールディング」と呼ばれ、

絵だけでなく、

建築においては柱の頭の部分や天井と壁の接する部分、

建具や家具では開口部などの部分に施される装飾でした。

 

そのなかで動かすことのできるモールディングで

絵を縁取ったのが額の最初というわけです。

 

15世紀後半から16世紀にかけて、

聖人像を置くための屋根のついた

ミニチュアの建築物のような

タベルナクル額」が

建築装飾の一部としてデザインされるようになりました。

 

日本で例えたら仏壇や神棚のような、

といったらよいでしょうか。

 

その場所を他の建築内部と聖別したスペースでした。

 

 

額のデザインの変遷 ルネサンスからマニエリスムへ

 

タベルナクル額」はその後、

徐々にデザインがシンプルになり、

宗教とは関係ない人物の肖像画や、

壮大な歴史画や静物画にも額縁が使われるようになりました。

 

それらは「カセッタ額」として知られています。

 

「カセッタ」とはイタリア語で「小箱」を意味していて、

シンプルなモールディングや

装飾が施されていることが特徴です。

 

しかし、16世紀後期になると、

額のデザインは再び装飾性を高めていきます。

 

芸術の都フィレンツェで隆盛を誇ったメディチ家が、

額にも贅沢な注文をしたためです。

 

それは「アリキュラー額」と呼ばれ、

耳のような形をした装飾で、

全体に金メッキが施され華やかな透かし彫りがされています。

 

17世紀に入り、

ルネサンスとバロックの合間の様式である

マニエリスムの「サンヴィーノ額」が作られました。

 

渦巻模様と螺旋が絡み合わされた複雑で華麗な装飾で、

果物の花綱飾りや

天使やキューピッドまでが彫られているのを見ることができます。

 

 

 

イギリスとオランダ それぞれの額

 

マニエリスムはイギリスの美術にも影響を与えました。

 

サンダーランド額」という耳状の飾りを特徴とする額で、

渦巻の装飾はマニエリスムより浅く柔らかな浮き彫りとなっています。

 

頂上に「カルトゥーシュ」という盾や紋章、

武具などの飾りがあり、

下部には人面(マスク)がついているデザインです。

 

17世紀、オランダと新しい世界との交易により、

鼈甲や黒檀などの外来の珍しい素材が

北ヨーロッパにもたらされました。

 

当時の「オランダ額」は作品や壁より盛り上がった

凸状のモールディングで作られる「ボレクション様式」で、

表面は黒檀仕上げ、

銀箔や象嵌細工や鼈甲などで化粧貼りがされています。

 

オランダにはもう一つ、

より手の込んだ「オランダ・アリキュラー様式」の額もあり、

それは豪華に金メッキされ、

花や果物の綱飾りと武器の模刻などで飾られていました。

 

 

 

「グランドツアー」でイギリスに持ち帰られた額 建築家がデザインした額

 

18世紀のイギリスの上流階級には、

ヨーロッパの古典文化や

ルネサンス文化を学ぶための

「グランド・ツアー」を行う習慣がありました。

 

その「グランド・ツアー」

イタリアからイギリスに持ち帰られて人気を博したのが

カルロ・マロッタ額」です。

 

金箔が水貼りされ、

面の中央が凹んで両脇が盛り上がった形の

モールディングになっています。

 

またイギリスではジョージ王朝時代建築家

ウイリアム・ケントによってデザインされた

ケント額」も広く知られていました。

 

古代ローマ建築に感銘を受けた16世紀イタリアの建築家

アンドレア・パッラディーオなどの流れを汲む

ケントの建築様式をそのまま額にも表現したものとなっています。

 

 

フランス・バロックとロココの額はルイ王朝の変遷とともに変化 

フランスで美術が隆盛を極めたルイ13世から16世までの時代。

 

17世紀前半から18世紀後期に渡る、

フランス・バロックロココの時代であり、

額の様式も在位した王によって変わっていきます。

 

いずれも金箔を施した豪華なものですが、

代々華麗さを極めた彫刻の装飾が、

ルイ16世の時代の新古典様式は全く踏襲されず、

シンプルで古典的なデザインとなっています。

 

ナポレオンの治世では

ポンペイやヘラクレネムでの遺構の発見を奨励し、

新古典主義への関心がさらに深まりました。

 

それが現れているのが

アンピール様式」の額です。

 

 

 

イギリスではヴィクトリア朝時代にロココがリバイバル

 

19世紀のイギリスでは

初期のルイ様式の額に影響を受け、

さらに装飾を大きくした額が作られました。

 

漆喰や樹脂などを用いた

「コンポジション」によって

レリーフの飾りが盛り上げて

作られているのが特徴で、

レリーフ自体を複製することもできました。

 

イギリスの当時の油彩画には

このロココ・リバイバルの額がよく合っているようです。

 

以上、19世紀までのヨーロッパとイギリスの額について、

駆け足で見てきました。

 

次回は、日本独自の書や絵画を額装する「和額」を取り上げます。

どうぞお楽しみに。

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